大嫌いな昼休みが少し楽しみになったのは、確実に椎先輩のせいだ。


「お昼、一緒に食べよう」


いつも申し訳なく思っていた紗由の誘いを断るようになったのは、ここ数日のこと。


「ごめん、約束してる人がいて…」


椎先輩がいるあの空き教室で一緒にお昼を食べるようになったんだ。

もともとは紗由と一緒に食べていたんだけど、私が紗由と一緒にいると紗由にも迷惑がかかるからいつも申し訳なく思っていた。

でも私にはほかにお昼ご飯を食べられる場所なんて見つけられなかった。

だけど椎先輩がとっておきの場所を教えてくれた。


まるでパラダイス。

秘密のユートピア。


「楽しそうね、麗」


紗由は笑う。

少し寂しそうな、でも嬉しそうな、そんな表情。


紗由は知ってる。

私が椎先輩と昼休みを過ごすようになったことを。



「いつもごめんね、紗由」


私がいるせいで、紗由には迷惑をかけっぱなしだ。

私をいじめる人たちが紗由にまでちょっかいをかけようとするから。

眉をひそめる私に、紗由は「なんのこと?」と言う。


「麗に迷惑をかけられたことなんてないんだけど?」