休日の午後は結構人が多く、忙しいが、今日は比較的少ない方だ。

少し気を抜いていた玲也は、店のドアが開く音にハッとなる。



「いらっしゃいませ」



入ってきた客の姿に、心臓が飛び出さんばかりに大きく鳴った。



(あの子だ…)



なんとか興奮を抑え、自然な笑顔をつくる。


当たり前かもしれないが、今日の彼女は私服で、この前と雰囲気が違う。


彼女は緊張の面持ちでゆっくり口を開いた。



「びゃっ…あの」



実際かなり緊張していたらしく、彼女は舌を噛んだのか、妙な声を出し顔を赤くする。



(可愛い…)



玲也は笑ってしまいそうになるのを我慢して、気がつかないふりをする。


やはりと言うべきか、彼女はあんずジャムを注文した。