ザワザワザワ…


鬱蒼とした木々が揺れる。


「ここが、“不思議の森”…?」


シラユキくんが、生い茂る木を見上げながら呟いた。


「なんだか、不気味な所だね…」


「うん。ここには滅多に人が立ち入らないからね。」


私の言葉に、チェシャが静かに答える。

チェシャは、慣れたようにするり、と木々の合間にある道へ入った。

ごくり、と喉を鳴らし、彼の後に続く。


ヒョロロロ…


聞いたこともないような鳥の鳴き声が聞こえる。

かろうじて道がある方へと進んでいくと、ふいに、チェシャがぼそり、と口を開いた。


「ねぇ。」


(?)


声をかけられ、ぱっ、と彼を見つめる。

チェシャは、こちらを振り向かないまま私に尋ねた。


「君って、どうして笛を探してるの?」


「えっ!」


突然のことに、私は目を見開いた。

ちらり、と後ろを振り返ると、シラユキくんは木の根っこに足を取られて、もたついている。


(…ウサギさんの仲間だし…。私が人間であることを知ってるチェシャにならいいかな…?)


私は、こっそりチェシャに答えた。


「…実は、人間界への帰り道を探すためなの。ウサギさんを追いかけて、何も考えずにこの国に来ちゃったから。」


「…ふぅん…」