月曜日、運命の日がやってくる。


いつも通り、8時40分には出社する。
買ってきた珈琲を飲んで、メールをチェックするのが朝の日課だ。


「おはようございます」
田野畑さんが出社してきた。

「あぁ、おはようございます。今日、本社からうちの部に1人来るらしいですね」
何気ない会話のフリをする。

「そう!本社勤務のエリートでイケメンらしいですね!!」
彼女の目がキラキラ輝いている。

彼氏居るでしょ・・・と言っても「これとそれとは別!」らしい。


「ま、渡辺さんのような『氷の女王』にはわからないでしょうが・・・」

『氷の女王』とは、不本意ながら私についたあだ名だ。
営業スマイル以外では、笑顔を見せない。
自分にも、他人にも一切妥協をしない。

そして、セクハラや男性からのアプローチを表情何一つ変えずにあしらっていることからきている。

実にくだらない理由だ。


「あー楽しみです。うちに新しい人が来るのも久しぶりだし」

確かにいわれてみれば、随分久しぶりだ。
うちの部は5名しか居らず、田野畑さん以降は誰も入ってきていない。

「確かにそうですね」
そう言った所で、部長がフロアに入ってきたのが確認できた。

「おはようみんな」
部長こと清水部長。40代半ばの男性で、この日本支社の設立から居る人だ。