目の前に並べられているルーズリーフと、注文して届いたばかりのパスタ。


あたしはクリームパスタを口に運びながら裕斗の考える可能性を聞いていた。


「まず、杏も夏男も本当の事を言っているとして考える」


「うん」


「杏は夏男に連絡をして、夏男の家ではないどこか別の場所で会う約束を取り付けるんだ。そして杏はタクシーを使うなりなんなりして、約束場所へ向かう。だけど、そこに夏男はいなくて、他の誰かがいたとしたら……?」


「他の誰か?」


あたしはパスタを口に運ぶ手を止めて裕斗を見た。


「そう。杏が夏男にメールを送ったとすれば、その間だけ別の人間が夏男のスマホを操作し、夏男になりすまして杏と連絡を取り合う事ができる。仮に電話だったとしても、案外人の声の区別はつかないものだよ」