小春ちゃんから洋服を貰った代わりに、約束通りクッキーの作り方を教えてあげた。


とても簡単なはずなのに、小春ちゃんはかなり苦戦していた。


身の回りのことまで他人がしてくれるから、どんどん不器用になったのだそうだ。


それでも一生懸命に作ったクッキーはとびきり美味しい味に仕上がっていた。


いつも電車の中から見ていたお屋敷。


どんな子があのお屋敷に暮らしているのだろうと思っていたけれど、そこにいたのはごく普通の女の子だと言う事がわかった。


1人でいることが寂しくて、友達を家に呼びたくて、でも叶わなくて。


そんな気持ちを紛らわせるために写真を撮っている女の子だ。


あたしは鼻歌を歌いながら家に戻ってきていた。


「あらお帰り。どうしたのその荷物」


お母さんがあたしの手に持っている紙袋を見てそう聞いて来た。