あたしは屋敷の前に戻ってきていた。


あたしが帰る場所はもうここしか残っていない。


そう思うと冷たい風が胸に吹き荒れた。


ここに本物の愛情はない。


ここには安らぎもない。


ここにはあたしの望んでいた物なんて、なにもない!


「お嬢様、どこへ行ってらしたんですか?」


ドアが開き、ユキエさんが冷たい顔で見おろして来る。


あたしはグッと涙を押し込めてユキエさんを見た。


その顔には血がついている。


奴隷たちを痛めつけたときについたんだろう。