放課後になるのがこれほど長いと感じたことは今までなかった。


眼鏡がなければ生活に支障がでる。


けれど、眼鏡をかけている間は人の心が聞こえてくるのだ。


あたしはできるだけ眼鏡をかけないようにして過ごした。


それでも、授業中や休憩時間に聞こえて来る汚い声は止まる事を知らなかった。


次から次へと、みんなの心からあふれ出て来る不満。


耳をとじていても、それはあたしの脳内に直接入り込んでくる。


あたしは声に押し流され、先生の声も聞こえなくなる。


ズキズキと痛む頭を押さえていると、あっという間に放課後になっていた。


「里菜、今日は1日体調わるそうだったけど、大丈夫?」


美穂の言葉にあたしは顔を上げた。