「里菜、おはよう!」


教室へ入ると同時に後ろからそう声をかけられて、振り向いた。


立っていたのはクラスメートの前田美穂(マエダ ミホ)だった。


「あ、眼鏡変えた?」


美穂はあたしの顔を確認するや否やそう言って来た。


「うん。昨日買っ……」


『買った』と言おうとして口を閉じた。


お金は支払っていない。


店が忽然と消えてしまったんだから、支払いができるわけもない。


「へぇ、昨日買ったんだ? いいじゃん、似合ってる」


美穂にそう言われ、あたしはほほ笑んだ。