今が昼の1時だから帰るのが夜の3時くらいか。

私はバッグを持ち直すと扉を開けた。


愛「ByeBye☆彡」


ご機嫌な声で言うと翔真はホッとしたように言った。


翔「おう。行ってらっしゃい」

愛「今度家で飯食ってけよ~!」


そしてご機嫌な声で翔真を家に誘ってから教室を出た。

(よしっ! 仕事頑張ろ!)

後ろで"俺も仕事があるので帰ります"という声が聞こえたが私の気のせいだろう。



と、ルンルン気分で教室から離れた。



















──────〖side:市ノ川 裕翔〗



転校生が来るというのは前々から聞いていたことだ。

今日の5時間目が始まったとき、俺達でも絶対に破壊できない頑丈さの門を壊している奴をみて、もしかしたらなんて思った。

この学校には俺らより強い奴はいないはずだから。

そんなことを考えていた最中、理事長からの校内放送が入った。

スピーカー越しに聞こえる声は珍しく焦っていて、否、恐がっていて、蝶華の9代目総長でもそんなことがあるのかと驚いたが、何よりも理事長に粗い口調で脅しのようなものをかけていた奴の方が気にかかった。


教室で"仲間"とその事を話していたら、案の定転校生が来たという永石先生(翔真)の声が聞こえた。

永石先生は9代目蝶華の副総長で、10代目を除けば歴代最強の猛者だったが、転校生に怯え敬語を使っているところを見れば転校生はただ者ではない事が窺える。

その証拠に、理事長が何故か教室にやって来たとき、物凄い威圧で追い返していた。

理事長に盗聴器を仕掛けたとか何とか…。

本当に、あのフード野郎は何者なんだ…?


もっと仲間と喋りたかったが、生憎今日は用事がある為早退した。

廊下に出るともうフード野郎はいなくて、俺は寮に寄らずに家へと足を進めた。



家の門の前に立つ。

目の前にあるのはでかい和風の家屋。

木で出来ている表札には大きめの字で市ノ川組と書かれている。

俺の実家は、実は世界№2の組だったりする。

今日は組の会合の為、わざわざ学校を抜け出して来たのだ。

まあ、まだ若頭止まりで組長ではないがな。

転校生……悠って言ったか。

あいつが組の事と"あの事"を知ったら他の奴らみたいに媚びてくるんだろうな。

そんな事を考えながら家に入る。


「「「「お帰りなさい! 若頭!!」」」」


うるさい程の挨拶が飛び交う廊下を歩く。

父親の部屋、つまり組長の部屋の前へ着くと俺は襖の前で父親に呼びかけた。


裕「組長。市ノ川裕翔、ただいま参りました」

組長「入れ」


父親に許可を得てから中へと入る。