《椿ホーム》へ戻ってきた俺たちはすぐに警察を呼んでもらった。


城の死体をあのまま放置しているわけにはいかない。


「おばあちゃん、あの女の子って……」


「あぁ、人間に化けていたタヌキだよ。あのタヌキは《椿森》の伐採が始まった当初からよく見かけたもんだ。椿が切られていくのをその目で見て、随分と辛い思いをしていたんだろうねぇ」


しみじみをそう言うおばあちゃんに、俺は脱力してその場に座り込んでしまった。


女の子の正体がタヌキだなんて、誰が想像しただろうか。


「動物には人間に見えないものが見える。椿の妖精もその1つだったんだろうね」


先輩がそう言い、俺の隣に座った。


さすがに疲れているようだ。


チェンソーで殺されそうになったにしては、しっかりしているけれど。


「タヌキは妖精に恋をして、人間に復讐を誓った……」


俺は呟くようにいった。


信じられないような出来事だったが、これで終止符は打たれたはずだ。


ホッと息を吐き出した時、パトカーの音が施設の前で止まった。