風魔屋敷。

それは、住宅地の外れにある日本風な屋敷で我が家だ。

結構な段数の階段を上り、門を越えてやっと玄関があり、広大な敷地を持っている。



そんな風魔屋敷の庭にある樹齢500年はするだろう桜の木を見つめながら、私風魔彩華は伸びをする。



男物の紫の着物の着流しに薄紫の羽織を羽織り、縁側の上に置いた座布団の上で桜を見る。



朝の桜も、昼の桜も、夜の桜も綺麗だ。



枝分かれし、滝のように咲き乱れる風魔屋敷の庭の桜が揺れると、

ザーッと自然を感じる音がし、池の水面の音も時折聞こえ神秘的だ。



何をするでもなく、縁側の上の紫の座布団の上に座り、

柱に凭れて桜を見ている。



あと何日かすれば出張から帰ってくる兄静司と、夜にもなれば帰ってくる弟の静夜。



2人が居なければ、この屋敷に居るのは私だけだ。



………1ヶ月前、両親が交通事故で2人共他界した。



母真弓と父楠雄はとても仲が良く、私達をとても愛してくれた。



悪い点なんて何1つもない家庭だった。



とても良い両親だったが、最後はどんなものを迎えたのだろう。

良い行いをすればポックリ逝けるなんて事はあるのだろうか。



もしあるとすれば、2人共同時に即死であってほしいと思う。

お互いが同時に死ねば、どちらか片方が死ぬ様を見なくて済むから。苦しむ様を見なくて済むから。



どうせ死んでしまうのなら、私は2人に苦しんで欲しくないから………。



そう思ってると突然強めな風が吹き、先程の神秘的な音がする。



桜の、水面の揺れる音に耳を澄まし、目を閉じる。



目に浮かぶのは目の前にある桜なのだが、目を開けて実物を見ると、より一層神秘的で幻想的だ。