就業が終わると、私は重い腰をゆっくりと

上げた。そのまま誰に挨拶をする事もなく

ロビーに行くと美香の大声が追い掛けて来

た。

「葵~!ちょっと待って~~~!!!」

正直今は振り返る余裕でさえない。だけど

大声で自分の名前を呼ばれるのは恥ずかし

いので仕方なく振り返った。

「もう、何?ていうか、それは?」

私が指さした先には、美香が抱えているま

あまあ大きな段ボールがある。美香は一旦

私の前にドンとその荷物を置くと凄い形相

で私を見てきた。

「これ、私の服。いらないので良ければ着

て」

「えっ!?この中、全部服なの!?」

今の私にとってはありがたい事だ。何もかも

が燃え尽きて消滅した中、例え不良品だと

しても服を恵んでもらえるのは実にありがた

い。感謝しよう。

「ありがとう。貰って行くね」

「お礼なんていらないよ」

私は感謝しつつ段ボールを持ち上げた。思

っていたよりも重くてがに股になりそうにな

る。ヨロヨロしながらロビーを出ると少し

歩いて荷物を降ろした。