昴side


俺達は傷だらけの愛莉を支えながら、学校を出て氷蓮の倉庫に来ていた。


隼人が愛莉の手当てをしている。


「愛莉ちゃん、大丈夫ですか?」



「うん!隼人くん、ありがとう!」


傷だらけの愛莉を下っ端達も心配していた。


愛莉達の様子を見ていると幹部の1人の光輝が小声で俺に話しかけてきた。


「昴…ちょっといいか?」



「おう、どうした?」



「ここだとちょっと…。」



「…あぁ、わかった。」


俺は光輝と一緒に幹部の部屋に入った。


光輝は誰も居ないことを確認し、静かに話し出した。



「…昴…。愛莉は本当に…緋莉に切り付けられたと思うか…?」



「どういう意味だ?愛莉が嘘をついてるとでも言いてぇのか?」



「…いや…。でも俺…さっき屋上に居た時、見たんだ…。愛莉が…緋莉の方を向いて…笑ってたんだ…。切り付けられたら泣いたりするのが普通じゃないのか…?」



光輝の言葉に俺はピクッとする。


実は俺も愛莉が緋莉に向かって笑っているのを見ていた。


今まで見たこと無いような黒い笑みをしていた。



まさか俺以外にも見たヤツが居たとは…。



「なぁ、昴。…俺は…俺達は…愛莉を信じてて良いんだよな…?」



「…緋莉を追い出した以上、俺達は愛莉を信じるしかない…。とりあえずこの事は絶対に他言するな!いいな?」



「わかった…。」



光輝は幹部の部屋から出て行った。



もしかして俺達は信じる相手を間違ったのか…?


…だが、もう後戻りは出来ない。


俺達は愛莉を信じるしかないんだ…。



俺は自分の心の中で言い聞かせていた。