握りしめたラブレターが
手汗で濡れて、ボールペンで書いた文字が滲んでないか心配だ。



「やっぱ、ちょっと無理かも……いや無理だよ。
 絶対、100%完全に……振られるよね、うん。」



夕焼け色に変色してしまっている顔で、情けない声をだす私は、天沢詩(あまさわうた)、高校一年生。



単刀直入にいうと、私は学年が1つ上の先輩に思いを寄せている。


ここ1週間、人通りの少ない放課後の時間帯を狙って、二年生のシューズロッカーの物陰に隠れているけど。



一週間前から持っているラブレターを、いつ先輩のシューズロッカーに入れようか迷っている時点で。

完全にタイミングを失っている。


もちろん、入れるタイミングなんていくらでもあったよ。


けどね


このマイハート(つまりは心臓ちゃん)がバクバクしちゃってね。無理なの。


勇気がでない。


だって私、先輩とは一度も話したことも、目があったこともないから。