他人が自分に対する感情を、やけに気にするようになったのはいつからだろう。




「よし。大丈夫。」

鏡に映る自分の姿を見て呟く。


人より少し小さいけど丸い顔。
片方だけ二重の目。
低くて小さな鼻。
そして、微笑んでる桃色の唇。

容姿は普通。自覚済みだ。

目にかかるくらいの長さの前髪をまっすぐにおろして、
肩まで伸びている後ろ髪を1つに結ぶ。


「芽衣。前髪、ピンでとめないの?」

「大丈夫!今度切るよ。」

母が私を心配そうに私を見てくる。

「でも...今邪魔にならない?」

「へーき。別に前見えるし!」

(いつも気にしてないくせに。)

気にしない、というか見ていないのだろう。私のことなんて。



「いってきます。」

玄関のドアを開けて家を出る。

誰からも返事なんて聞こえない。というか私の声が届いていないのだろう。




初めて着るブレザーの制服とミニスカート姿の自分が、
周りからどのように見られているのか気になって仕方がない。

(はいはい。自意識過剰ですよ。分かってます。)

誰も私なんて見ていない。そんなこと理解してる。

それでもやっぱり気になってしまう。



「自分の姿」を、

今誰かが笑っているんじゃないか。

今誰かを不快にしてるんじゃないか。



そんなことばかり気にしてしまう。

全部"彼"のせいだ。

私を置いていった"彼"のせい。


(懐かしいこと、思い出しちゃった...)

別に思い出さなくてもいい。

思い出す必要なんてない。

忘れてしまった方が楽。


思い出しかけた"彼"の顔をムリヤリ頭にしまい込む。


「芽衣!大丈夫?聴こえてるー?おーい。」

「あっ、ごめん瑞穂!ちょっとぼーっとしちゃってただけ!」

「もうっ!しっかりしてよー!」

そう言って

「親友」の瑞穂と2人で笑い合う。

きっと毎朝こんな感じで過ぎていくのだろう。

なにひとつ特別じゃない



私の普通の高校生活___