「……そう、ちょう?」

由李から顔をあげて、言葉の意味を理解しきれない、というような表情の相良君をじっと見つめた。

(……この人が、由李の好きな人)

染めているのか、知らないけれど。温和そうな雰囲気に良く似合う茶色の髪。

普通科の黒い制服は、さっきの男達みたいに原型を留めていないわけでもなく、程よく着崩されている。

女の子達が騒ぐのも分かる。確かに、格好いい。

由李を助けたと聞いた時は、「どうせ、由李に近付くために優しい振りをしているんだろう」と思っていた。

だって、由李は可愛い。

大人しい性格で、お人好しというか抜けてるというか。

変に我慢強くて、そのくせ物凄く傷付きやすいから。

そんな由李の弱いところにつけ込んで、由李を傷付けようとした人達は、これまでだって後を絶たなかった。

勿論全員、由李に近付く前に叩きのめしてやったけど。

だから、相良君も同じだと思っていた。

けど、実際会ってみると、由李が言っていた通りの穏やかな人だと分かった。

由李のことが好きなんだろうってことが凄く伝わってくるし。

そして、何より。男性恐怖症の由李が、唯一平気な男の人だから。

「総長か、それで強いんだね」

「喧嘩は、そうだね。貴方よりは強いかも」

ーーでも、それが何だって話。

「……何か、雰囲気違うね?」

困惑したように微笑む相良君に、「当たり前でしょ?」と首を傾げる。

「由李じゃないし」

「……そうだね」