暖かい日差しが差す窓際のこの席で、机にだらりと身を投げ出して睡眠に興じる。

うつらうつら。

とんとん、と肩を叩かれて、俺は目を覚ます。微睡の中で、あの子の姿を捉えた。

あの子が振り返って、俺に柔らかく微笑む。

そして、俺の名前を呼ぶんだ。

ーー「要」って……あれ?

あの子の声は、こんなに低かっただろうか。

まるで、男みたいなーー


「ーーおい、要!」

「った!……んあ、夢?」

目の前には同じ普通科の制服を着崩した男ーー美鈴が立っていた。

どうやら俺を乱暴に夢から目覚めさせたのは彼らしい。

「起きたか」

その声が、夢の中のあの子の声と一致した。

美鈴の声だったことに安堵したが、あの子の声でなかったことに落胆した。

「寝ぼけてんじゃねー。話があるって言ったの、お前だろ」

そう言われて、先程の屋上で「聞いてほしい」と呼び止めたことを思い出した。

「あ、」

「早く話せよ」

彼は溜息を吐いて、どかっと前の席に座り、だるそうに頬杖をついている。

俺が起き上がるのを待たず、焼きそばパンの袋をびりっと開けた。

「実は、さっき目が合ったんだよね」

「へぇ、それで?」

「え、それだけ」

「……」

睨みつける彼に、にっこりと微笑みを返して、俺は窓の外に目を向けた。

中庭を挟んで向こう側の新校舎ーー特進科の校舎は、こちらのよりもずっと白くて綺麗なまま。

それを見るたびに、住む世界が違うんだと実感させられる。

「この前は、あの子と話せたんだろ?」

焼きそばパンを食べ終わった彼が、頬杖をついてこちらを見ていた。

「そうなんだよね。本当に可愛かった」

真面目な顔で答えると、彼は大人びた表情で「へぇ」と微笑んだ。