悲しいくらい冷たい風と銀色に輝く太陽が雲ひとつない青空に君臨する。
吐息は白く上がり握りしめた手はひどく冷たい。
【初詣】の看板をもつ男はやる気無さげに誘導をする。
澪は人の多さに顔をしかめ鳥居の前で一礼し立ち去った。

スマホの画面を一度つけ通知がないことを確認する。
落胆した気持ちと割り切った気持ちが複雑に混ざり合う。
「親なら新年の挨拶の返信くらいしろっての。」
誰にも届かない独り言は虚しく空に消えていった。

大学生になって初めてのお正月。
澪はやっと呪縛から解放された。
帰省して大嫌いな親戚に会うこともなく自由に過ごせる。
姉は彼氏の家にお泊まりで親はどこか遠くの神社まで初日の出と初詣のために出かけた。
澪はつい数時間前のことを思い出す。

毎年の地獄のような年越しとは違い今年は大切なやつと過ごした。
親には高校の友だちってことにしてあるけど、本当は大学で出会った所謂友だち以上恋人未満ってやつ。
気があって楽しくて優しくて、何より一緒にいて楽な相手。