相手は同じ大学の4年生だ。

就職が決まっていて時間はたくさんあるし、しかも車を持っている。

ということで女性陣はみんな気合を入れてお化粧をしていて、いつもよりもかわいい服を身に纏っていた。

どうせ汗で落ちるし…とたいして化粧もせず、いつも大学へ行くのと変わらない服装だった私は、恵理に「やる気なさすぎ!」と怒られた。

当時、私たち女性陣は18,9歳。

お酒が飲めないと、必然的に合コンの場はカラオケになる。

ジュースを飲んだり歌ったり、隣の男の子と話して笑って、周りの雰囲気に合わせながら過ごしていた。

メンバーの中でひときわ女性陣の目をひいたのが、七橋秋――

今は社長の息子だとバレないように母親の旧姓の『穂積』を名乗っているけど、本名は『七橋』なのだ。

彼は来ていたメンバーの中で唯一大学院に進むと言っていた。

かっこいい雰囲気なのに、彼は最初から決めていたかのように一番隅の席に座ってしまい、みんなあからさまにアピールしに行くことができなかった。

もちろん話しかけられれば笑ってそれに応えるし、ノリも悪くない。

それ以外は静かに酒を飲みながら歌を聴いている。

決して合コンが嫌そうな態度を取っているわけじゃないのに、この場の雰囲気にそぐわない人だと思った。

私は自分の位置からちょうど真っ直ぐ視界に入るその人が、なんとなく気になっていた。