「七十六万」

開いた通帳に視線を落として残高を確認した僕は、弱々しい声で呟いた。

あれから二週間が過ぎ、九月の中頃。僕は神社に十四万を納めて、女神様に頼んで彼女の転校をなんとか引き伸ばしてもらっていた。神社に一万円を納めると願いが叶うということはほんとうらしく、僕が納めた金額分のときだけ彼女の母親の体調も良くなった。そして彼女の母親が入院する予定の病院も、そのときだけはいつも救急患者が運ばれて病室がいっぱいになる。

「もう、こんなに貯金が減ったのか………」

減り続ける残りの貯金額を見て、僕は困ったような顔を浮かべた。

この数週間で僕は何十万という大金を神社に納め、彼女の転校を引き伸ばしていた。百万円あった貯金も、今は七十六万とかなり少なくなっていた。