【茜side】

「有馬先輩、いくつか質問してもいいですか?」

「…は?」



先輩のお見舞いに行った日から2週間ほどたったある日、私たちはいつも通り準備室にいたんだけど…


スケッチをする手を止め、私は窓辺に座る有馬先輩の前に立った。



「私たち、一応恋人同士じゃないですか。なのに私、先輩のこと全然知らないなって思って…」

「ふぅん」



興味がないのか、先輩は読んでいる本に視線を落としたまま。


普段なら “ 目が合わないのはいつも通り ” なんてスルーしちゃうけど、今日の私はひと味違う。


「先輩、こっち向いてください!!」


そう言うと、先輩はようやく顔を上げてくれて。



「…なに」



グッと眉間にシワを寄せてるけど、そんなことでは怯んでいられない。



「先輩のこと、もっと知りたいんです!」

「…わかった」

「っ、ほんとですか!?」



まさかOKを貰えると思っていなかったから驚いた。

だって、あの頑固で天邪鬼な有馬先輩が…!



「ただし、先に俺が茜に質問する」

「へ?」



本をパタンと閉じ、ニヤッと笑った有馬先輩。


な、なんか嫌な予感が…!