「おい。」


そう声をかけられた時、わたしの意識は半分飛んでいた。


「こんなとこで何してんだ。」


声が出ない。ただ、寒気が増して、背中の痛みが激痛に変わっていた。


何も答えないわたしに嫌気がさしたのか、男が通り過ぎようとした。


「うっ…っ」


吐き気がする。痛い。痛い。痛い。


わたしは体を丸めて地面に倒れこんだ。


男の足が止まった。


「家出か。」


そう尋ねてくる。


「ち…っ…が、い…ます」


震えながらもかろうじて言葉を押し出す。


人が倒れている時によくそう冷静でいられるものだ。


わたしは痛がっている自分をどこか遠くで見ているような気持ちになった。


男はしばらく黙っていた。わたしに手を差し出すわけでもないし、置いていくわけでもない。


それがうざかった。


本当に半分気を失いそうになった時、


「犯されたか?」


とんでもないことをぶち込まれ、本当に死んでしまうって思った。


だけど次の瞬間、


腕が触れたと思った時には、ふわっと宙に浮いていた。


「俺はそこまで最低な奴じゃねえ。怪我してるやつ置いて逃げたりしねえよ。」