わたしを捉える墨色の瞳は恐ろしく澄んでいる。

ああ、まただ。


羨ましいほど真っ直ぐで、今にも吸い込まれてしまいそうだ。


「何してる」


彼はもう一度、そう聞いた。

別に興味が全くないという表情ではない。

だけど、関心を持っているようにも見えない。

ただ、聞いている。それだけの、そのピクリともしない表情に、わたしはいつも圧倒される。


わたしも彼みたいに強くなりたい。


彼の余裕に満ちたその彫りの深い顔を見ると、いつもそう願わずにはいられない。

自分と彼の天と地のようなその差を思い知らされる。


「おい」


彼の瞳があまりにも深く綺麗で、わたしは一瞬自分の立場を忘れていた。

彼がどこにいるのかもよくわかっていなかった。

だって彼がどこで何をしていようが、気にならないから。

そっちに気をとられる前に、わたしは彼の瞳に捕らえられているのだ。

わたしがやっとの思いで彼の瞳から目をそらすと、黒いソファに座っている彼の姿が初めて目に写り込んできた。

広いリビングのような場所に、これまたどでかい大きな革のソファ。その上にでdevilは、別に偉そうでもなく、ごく普通に座っている。

黒い革ジャンのようのものに普通の黒のジーンズ。

なのになぜ、こんなにも威圧を感じるのだろうか。

心の中で呼ぶ彼のあだ名はdevil。あの日の乱闘を見てからの彼のニックネーム。

別に悪い意味じゃない。ただ、angelじゃないから、devil。

それだけのこと。