光はその日、バイクで来ていた。


『……乗れ。』


そう言われ、だけど乗り方がわからなくて、結局舌打ちをされながらひょいっと持ち上げられて乗っけられた。


腹部が痛んだけど、顔に出ていなかったことをだけを期待したい。



そして光がわたしの腕を引っ張って、自分の腹に回させたから心底驚いた。


自分の震えが伝わっていなかったかが不安だ。


だけど、ありえないけれど…


筋肉が付いていて硬くなったその腹は、どこかわたしを安心させたんだ。


その温もりに触れているだけで、心の奥の緊張がほぐれたのはここだけの秘密だ。


そしてそのまま、わたしはあの日と全く変わっていない屋敷にたどり着いていた。



着いて早々自分の部屋を与えられた。光の隣の一室だった。まだベッドしかなかったから、買いに行こう、とだけ告げられた。


どうしてここまでしてくれているのかはわからなかったけど、とにかく、ホッとしたのは覚えている。


岬は、へえー、って感じでわたしを見つめ、『よっ。』と、あまり驚いた様子は見せず手を挙げた。



あれから二日。



今日、外出するらしい。