マジかよ……やりやがったアイツ……

その場にいた全員がそう思った。
『あれってまさか【和ノ大国】出身の殺人鬼、<人斬り>【世場乱之助】(せば らんのすけ)じゃねぇかよ……』
誰かがそう言った。
「説明乙でーす……」
ピーターは小さな声で言った。

【世場乱之助】、他の国とほとんど干渉しない【和ノ大国】の唯一の出身者だ。
かつて約13年間に666人を斬り殺し、【和ノ大国】中を恐怖のドン底に落とし、一斉に指名手配された極悪人である。
ちなみに何故か彼は666と13にこだわり、刀の柄の長さは13cmジャスト、刀身は柄の中にある分を含めてキッチリ66.6cmになっている。

――さて、勝てるかなコイツ。純粋な速さじゃ一瞬で殺られちまう、だったら……

ピーターは心の中で乱之助攻略に向けて作戦を組み、それを実戦する。
「よし、じゃあまずは……」
それを呟くと、ピーターは真っ直ぐ乱之助に向かって行った。
乱之助は構える。
「ここだぁ!」
そう言うと同時にピーターは全力で跳んだ、それは走り高跳びのように宙に浮いた。
そして――。
見事にピーターの勘が的中し、ピーターは刀をまるで走り高跳びのバーを越えるかのように避け、そして背中から着地したあとに剣を乱之助の脚めがけ横に振る。
もちろんそれで終わるはず無く、乱之助も跳ぶことでそれを避けた。
そして刀を力一杯、下へおろす。
ピーターが避けて即座に立ち上がり、剣を構える。

本来、日本刀は刀身同士の打ち合いには適していない。
相手を斬りやすいように薄く、そして扱いやすいように軽い。
しかしいくら薄いからと言っても鉄である、しかもただの鉄じゃない、鍛冶師が手間をかけ鍛え上げたものである。
なので、一度や二度の打ち合いならなんとかなるがマンガのようにバンバン打ち合うことはかなり難しい。
だが、相手の剣を流すことは出来る。

よって乱之助がとった行動は単純、ピーターの剣を流しつつ隙があれば斬る。

である。
ピーターが剣を下に振る。
乱之助が刀でなが……せない!
ピーターは、流されると予測して乱之助自身ではなく、刀を狙っていた。
「おサムライさんよぉ……俺がそれに対策を考えないとでも思ったか?」
ピーターはニヤニヤする。
乱之助の刀身がキリキリと、悲鳴をあげた。
『きょ、強力……!』
乱之助は思わず、声に出した。
「そりゃどうも!」
ピーターは挑発も含めて発言した。
乱之助は後退する。
ピーターは逃がさないように攻める。
乱之助は流せないことが分かったので、避けはじめた。