ガチャリ、と音を鳴らし扉が開き、ライト王子が姿を現す。
すっかり伸びきった黒い髪は自身の瞳を隠し、その無精ひげも乱雑に伸びて、表情が分からない。

しかし、私を発見したときの驚きようだけは、表情が分からなくとも感じ取ることはできた。


「お、お前、ずっとここで待っていたのか……?」

「いけませんか?私はあなた様の侍女ですし、挨拶すらせずにお仕事をするのは、失礼であると思いまして!」

そのときの私は、この扉が開いた喜びに少し気分が高揚していた。
これは始まりに過ぎないのに、まるですべてを達成できたと感じるほどに。


「……だから前も言っただろう?俺はひとりでいいって。侍女なんていらないよ」


王子は呆れたようにため息交じりで話す。
その言い方に少しムッとしてしまったが、なるべくその感情を出さないように答えた。


「そういうわけにいかないのです、王子!これは王妃様からの命令で、私、ララがライト王子の身の回りの世話を――」


「ったく、しつこいな。俺はしつこい人間が嫌いなんだ。もう二度とここには近寄らないでくれ」


王子は吐き捨てるように言うと、大きく音をたてて扉を閉めた。