「あの娘でしょ?寿永様にビンタしたの……」




ええ、私ですけど何か?




「えー!寿永様にビンタとか恐れ多いで絶対出来ないー」




絶対出来ないことをやってしまいましたが、何か?




私は廊下を歩く度に向けられる好奇的な目にうんざりしていた。




ほんの数時間前にしてしまった自分の過ちが恐ろしい。




あの寿永にビンタだよ!?




日本で知らない人がいない程で、皇室の次に高貴と言われる三名家の一つの次期当主にビンタだよ!?




もう私、国外追放されるって……。





「あぁ……本当に短気なんだから……」




自分の短所である短気なところが嫌になり、項垂れた。