千花side

一昨日も昨日も、とうとう伊吹は家に帰って来なかった。

昨日も忙しかったのは、分かっている。

職場ですれ違った時に、帰れそうにないとも伝えられた。

分かってる、分かってるけど……。
あの雰囲気を見ていた私は、何故か凹んでいた。
そして伊吹に例えその気がなくても、その気のある子と居ることにモヤモヤとした気持ちを抱えた。

そんな私の変化を察知した奈津子に、私は夜勤明けで奈津子は日勤だったので今日の夕方から会う約束をした。

「久しぶりに、女ふたりで飲もう!」

そうして訪れた居酒屋で飲んで飲んで、私はやさぐれていた。

「親戚でも、年下の高校生だとしても、あの子は伊吹が好きな訳でしょ?そんな子と居られるとさ、なんかモヤモヤするの!!あーもう!私いい大人なのに心狭いよぉ」

もはや出来上がって泣きながら話すとか、お酒の飲みすぎは迷惑極まりない。

そんな私の話を奈津子は、ウンウンと相槌を打って聞いてくれた。

「ね、こんなんじゃ伊吹に嫌われちゃう。でもいつもふたりで過ごしてた部屋に一人でいるのは寂しい。あの広い家に、一人なのは嫌だよ……」

そう言いながら、ぐびぐび飲み干すハイボール。

「今日も帰ってこないかな。退院するまで帰ってこないかな。それでも我慢しなきゃいけないよね。これから先こんな事いくらだってあるもんね。お医者さんの奥さんって、そういう事だもんね」

そう呟くと、飲みすぎた私は寝てしまった。

それを、背後で聞いて物凄く落ち込んでしまった伊吹に気付かずに。