外へ出ると9月初旬の空気はまだ蒸し暑く、さっきまで冷房の効いた場所にいたのに、また肌が汗でベタついてくる。

やっとセクハラから解放されてふうっと息を吐いたその時、太い腕がガシッと肩に回された。

「さあ、ふたりでニ次会に行こうか」

神田先生は冗談ぽく笑っているけど、腕の力はずいぶん強い。

アルコールと汗の匂いが混じって気持ち悪い臭いをぷんぷんと放っている。

もうこの臭いで吐きそうだ。生理的に限界。

「…はなしてくださいっ」

腕を振り払ったら、その勢いで先生の足がよろけた。

ただでさえ赤かった神田先生の顔がさらに赤くなり、顔が怒りで歪んでいく。

「なんだお前は!冗談も聞き流せないのか!」

周りの人が振り返るほどの大声にビクッと身体が揺れて目を閉じた。


「神田先生」

瞼の裏に影ができて目を開けたら、大きな背中があった。

「相沢さん、かなり酔っているので勘弁してやってください。
俺、駅まで送ってきますから」


…風間先生だ。