「…ん、りん」

耳元で聞こえる声で、心地良いまどろみの中から引っ張り出された。

目の前には、私を覗き込む悠さんの顔がある。

時計を見上げれば、もう9時をさしている。

今日のお礼を言おうとソファで本を読みながら待っていたら、そのまま眠ってしまったようだ。

「おかえりなさい」

目をこすりながら起き上がる。

「悠さん、今日病棟で」

言葉にする前に、ふわりと悠さんの温もりに包まれていた。

「なんで言わなかったんだ。そういうのは真っ先に俺に相談するもんだろ」

病棟で聞いた厳しい声ではないけど、やっぱり少し怒っている感じがする。