彼女のことを初めて知ったのはいつだっただろうか。

昼休みに時々医局で見かけるようになって、献立表の束を抱えていたから、管理栄養士であることはわかった。

機嫌が悪そうな先生の声が聞こえて、それに対して彼女は頭を下げて、カルテを抱えて医局を出て行く。

根津と話していてその理由がわかった。

「なるべく患者の食事のわがままを聞いてやろうとして、主治医に相談しに来てるみたいだよ。
でも医者にしてみればめんどくさい話だよな。
出せるものを出しときゃいいのに」

怒られてまでそんなことをする理由はわからなかったけど、とにかく真面目なんだなと思ったのは覚えている。


彼女が内科病棟の担当になったとき、初めて彼女の名前を知った。

「相沢凛と言います。よろしくお願いします」