落ち着いたあと、悠さんに付き添われて栄養課事務室の隣にある休憩室へ行った。

ここは普段、調理師さんが食事や仮眠をとるのに使われている場所。

「…俺は仕事があるから戻るけど、今日は早く帰れるようにする。
磯谷課長には伝えておくから」

私が頷くのを確認して、悠さんは足早に出て行った。

時計を見ると、いつもなら診察時間の真っ最中だ。

無理に抜けてきてくれたのかもしれない。

横になっていたら、しばらくして課長が静かに部屋に入って来た。

「もう大丈夫?
春田さんって患者さん、主治医になだめられてとりあえず落ち着いたそうよ」

「そうですか…」

「今日はもう帰りなさい」

「いえ、大丈夫です。まだ仕事があるので」

「状況は風間先生からだいたい聞いてる。
かなりショックな状態だったんでしょう?
無理をしないでちゃんと休みなさい。仕事なら私や他の栄養士が変わるから」

課長の声はいつもより少し厳しくて、心配してくれているのが伝わってきた。

「…じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。
もう少し休んだら帰ります」

とても不本意だけど、周りに気を遣わせてしまうのもよくない。

いい大人がこんなことで早退だなんて情けないけど、課長の言葉に従うことにした。