お爺さんと別れたあと、私たちはまた考えた。
じっくり考える為に家に戻った。
まずはくるみさんが口を開いた。

「このもやもやはなんなんですかねぇ…?」
「くるみさんの言った通り、心に眠ってて、言葉に出来ない想いってあるんじゃないかなぁと思うの。」
「亜希さんもそうなんですか?」
「そうねぇ。私だって本当は幸せに生きたかったし、死にたいって思ったって生きたいって気持ちもそうやってあったわけだしね。そこはそれこそ、言葉に出来ない想いだったんじゃないかなぁって。」
「なるほど…。」

人は弱い生き物なのだろう。
だから言い訳という逃げ道を探す。
「死んでいるはずなのに、生きる事について考えるなんて変ですね!」
くるみさんは、少し微笑んでみせた。
きっと生きてるうちは、死ぬ事なんて遠い先の話だと考える。
考えてないわけじゃない、でも感じる事が出来ないのかもしれない。

終わりが来ない事は希望の連続なのだと、今なら少し思える。
「そうね」
と私は微笑み返したあと、言葉を続けた。
「でも今以上に自分を考える事も無いかもね」
普通を目指した。普通を知った。
だからどうということはない。
ただ社会の歯車である事が社会を生きる中で必要な事だ。
くるみさんは私の言葉を聞いてから少し間を置き、言葉を発した。

「でも私たちって本当に何でこの世界に居るんですかね?」
今それを探す為に考えるのではないかと思ったが、疑問の意図が分からない
首をかしげた。
くるみさんは続ける。

「だって元の世界では、社会の歯車として生きていくわけじゃないですか。でもこの世界では社会の歯車は機械がこなして、私たちはただ漠然としたものを追いかけてて、到底歯車にはなり得ない訳じゃないですか?」
確かに。
死んだ人が全員来る訳では無いことは分かっている。
来る理由がある人が来ている。
しかし、私たちがいる明確な理由は無い。
それを探す事が今すべき事と私たちは思っている。
どうして?
ここで今度は私たちは詰まった。

また進んだ気がした。
長い沈黙が流れた。
沈黙を止めるように、私たちのお腹は鳴る。
2人で笑う。

「お腹空いたね、何か食べようか」
私がそういうと、くるみさんは満面の笑みで頷く。
食事の準備に取り掛かった。
お腹を満たした後、私はいつもの様にペンを取った。
<疑問は答えを探し、答えは疑問を呼ぶ。その繰り返しは終わりそうにないが、終わらない事はきっと希望に繋がってるはずだ。まだまだやれる事はありそうだ。明日もくるみさんと首を傾げながら、真っ直ぐにこの世界を見てみよう。>
そう書き終えるとまた眠った。