世界を回しているのは、人。
生きたい人、死にたい人。
生きてる人、死んでる人。

その肉体に魂が宿る時、世界が回り出す。
私はこれまで生とか死とかとは、違う間に立って生きてる事も死んでる事も考えてこなかった。
だからこそ、この仕事を受け入れる事が出来たのだろう。

ここ数週間の間に出会った2人の女性は真逆であった。
生とか死とか分からぬまま、ただ漠然とその一瞬を生きてきた女性。
希望を抱き生を恐れたが故、死を望んだ女性。

前者は声を掛けた時、生きていると安堵した。
後者は出会った時、死んだ事を信じようとした。
その違いは明確だ。

私は生きているとか死んでいるとかは、結果論でしかないと思う。
その結果はその心の持ち方にある。

生きようとしたものは、こんな世界にだって希望を見出し、生きる。
そうでない者は、きっとどこに居ても死んでいる。

私にとってはどちらでもいい話なんだけれど。
私の立ち位置というのは不思議なものだ。
命を生かすでもなく、殺すでもない。

ただこの世界にはルールがある。
複雑なものでは無い。
ランダムで選ばれている部分もある。

‘'この世界に来る者は幸せでないもの’’
‘'この世界に来る者は生きる事を願う者’’

人の形はそれぞれ、生まれ落ちたその時から選択を強いられる。
その中で全員が生きている。
ただ選択とは別に生きる意味を探す為に、この世界はある。

死を望まぬして生を受け入れられなかった者。
生を望まぬして死を知らなかった者。
生きるとは何か。
死ぬとは何か。
これはそんな2人が交差する生きる為のお話。
私には生きる事も死ぬ事も無い、ただ斜めから世界を見る、’’しがない’’タクシー運転手。
そんな私に見える世界もある。
そんな私が想う世界もある。
それは言葉に出来ないけれど、そこにある。