夕暮れ。

生徒達が夏を満喫して寄宿舎に戻ってシャワーで一日の汗を流そうとする中、1人黙々と汗を流し続ける紀州の姿があった。

海岸の岩場を駆け回り、砂浜を走って足腰を鍛え、リューク直伝の番犬式の拳闘術の型を繰り返す。

呼吸が乱れ、顎から汗が滴り、ようやく膝に手をついて休息を取りながら。

「……」

それでも何か足りないものを感じつつ、紀州は俯いて考える。

「紀州君」

水着姿のテリアが、ようやく紀州を見つけて歩み寄ってくる。

「こんな所にいたんだね。寄宿舎に帰ろう?晩ご飯、学食のおばちゃんが冷やしニンニクラーメン作って待ってくれてるよ?」

「…ん、ああ」

額の汗を拭い、紀州はテリアに頷いた。