「おい」

天神学園の廊下。

先輩は、1人の教師に呼び止められる。

黒いボサボサの髪、縁取りのように隈の出来た目、青白い顔、重苦しい雰囲気のインバネスコート。

天神学園教諭、ダンドリッジ・タチバナ。

いまや最強の真祖である学園長、ヴラド・ツェペリの後継者の貫禄さえ漂わせる吸血鬼だ。

「…なんだその黒道着は」

気に入らなげに、ダンドリッジは先輩の着衣を見る。

「天神学園に制服着用義務はない。服装自由の筈だが」

「それは『礼装』だろうと訊いている」

ダンドリッジは圧をかけるように言った。