入力し終わった資料をトントン、と揃えていたら、どさっと隣にその倍のファイルが積まれた。

「あー、市原さん、ごめん。これ、至急入力頼んでいいかな」


 そう言いながら、『申し訳ない』という薄っぺらい仮面を貼り付けた顔の柳さんだ。時計を見たら、既に5時半を回っている。

「……いいですよ」

 こういう誰かが困った時、助けてあげれば、私が困った時、きっと助けてくれるよね。

 なんて、約束もしていないそんな期待をしながら、答えた。

「よかったぁ……今日、ちょっと急用できちゃって……実は妹が階段で転んで骨折しちゃったみたいで! 病院行かなきゃなんだ」


「そっか、そっか。だったら、仕方ないよね。妹さん、お大事にね」

「ホント、うちの妹、ドジだよねぇ。じゃ、急いでるから! ごめんね!」

「いいよ、いいよ。お疲れ様」



 ホントにホントに妹、骨折ナンカ?