ケータイ小説 野いちご

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最低な元カレ専務の10年愛

10.そばにいたい

古巣である総務部のフロアに用事があって行った帰り、

「井川さん」

ラウンジのほうから声がした。

テーブル席に足を組んで座っている男の人。

一瞬誰だっけ?と焦ってしまったけど、すぐにそれが常務だと思いだした。

「ちょっと話しない?」

常務はテーブルを指さした。

仕事中だけど、常務が言うなら断るわけにもいかない。

「失礼します」

椅子に腰かけたら、ちょうど向かいに常務の姿がある。

休憩時間じゃないからラウンジには他に人もいなくて、私の周りだけ緊張感に包まれている。

ほとんど話したことがない相手だし…

「どこかに用事だった?」

「はい。総務課に。常務は休憩ですか?」

「ああ。気分転換に自販機に寄ったんだ」

テーブルには飲みかけらしいコーヒーの缶が置いてある。

「秘書の仕事はどう?」

「はい、だいぶ…慣れてきました」

「…君はなんで急に専務秘書に抜擢されたんだ?
元々は広報課なんだろ?
全然専務とは面識がないはずなのに」

「…えーと…なんででしょうね。
何かの間違いだったんじゃないですか?」

常務はなぜかクスリと笑ってテーブルに頬杖をついた。


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