テレビの音で私は目を覚ました。

視界に広がるのは見覚えのない部屋の天井。
私はソファに寝かされていた。

ここは…どこ?

部屋は案外広いが家具は少なく、最低限のものしかない。
建てられたばかりなのか新築のにおいがする。
窓の外は木が生えているのしか見えない。
どこか山奥の一軒家だろうか。

「気がついたのか」

声の主は見たこともない男だった。

20代後半くらいの黒髪で前髪は伸び、左目を隠すくらいの長さだった。
そして威圧感のあるオーラ。

私は身震いする。

「だ…誰?」

「そんなに怯えなくていい。別に危害を加えるつもりはない」

そんなことを言われても信じられるわけないでしょ!
私に薬を嗅がせて誘拐した奴なのだから。

「変なことをせず、しばらくここで大人しくしてさえいてくれたら何もしない」

大人しくって…
この部屋に監禁されるってこと?

「あなた…誰なの?」

「誰…ね。それは知らなくていい。”黒田(くろだ)”とでも名乗っておこうか」

「それ、本名?」

「さあな。教えられない」

黒田と名乗る男は黒ずくめの格好をしており、右目の下のほくろがあった。