7:20 携帯電話のアラームで目がさめる。
普段なら、もっと早く起きるのだが 今日は祖母の家に出かけるためこの時間に起きた。

「千春、朝ごはんよ」
と、部屋に入ってきた母は お気に入りの水色のワンピースを着た私に

「千春、本当にそのワンピースお気に入りね。そうだ、これもつければもっと綺麗になる」
そう言って母は私の左胸にガラス細工の施してある蝶のブローチをつけてくれた。

「このブローチは、先祖代々ずっと受け継いで来たものなの。」

何故、そんな大事なものを今私に預けたのかは分からないが とりあえず今日は付けていく事にした。

8:50 家を出る

祖母の家は電車で乗り継ぎして、一時間半の所にある。
携帯電話のインターネットで電車の時刻表を確認する。

「…あ、時間間違えてる!!」

家から駅まで徒歩15分
電車発車時刻まであと9分
全力疾走すれば間に合う、だけど今日はご生憎様 ハイヒールなのだ。

それでも、ここは都会と違って地方の田舎だからこの電車を逃したら 一時間は待たないと次の電車は来ない。

「あーっもう!!」

時刻表を確認しなかった昨日の自分への怒りを込めながら、走った。

その時、ふと 花のようなとてもいい香りがしているのに気がついた。
急いでてイライラしているのに その香りだけは嫌じゃなかった。

そうこうしてるうちに、駅までの距離はあと300mの所まで来ていた。

発車まであと5分

「間に合った…!」

そう口にした瞬間、目の前が真っ暗になって なぜか人の悲鳴が聞こえた。