「姉ちゃん」と声を掛けられて、顔を上げる。

うわあ、傍から見ると、ただ歩いてくるだけなのに素晴らしく絵になるわたしの弟と腐れ縁の彼。



かっこいい人たちって、何してもかっこいいんだな。



「ごめんね。待ち合わせ変えてもらって」



「別にいいよ。でも、」



ちろっと隣に向けられる視線。

それを受けた彼は、「なるせ!衣沙!」と思いっきりふたりを抱きしめてみせた。出迎え方がわたしの時とまったく同じである。



「ちょっ、苦し……!

待って待って、ギブだから流兄……!」



苦しそうに腕の中から抜け出したふたりに、何の悪びれもなくハハハと笑ってる流くん。

ガタイが良いんだけど裏表がない性格と笑顔が素敵で、動物に例えるなら大型犬。かわいい。




「……なんでいんの? 流兄」



「昨日、衣那くんと満月ちゃんのマンションに泊まったんだって。

ついでにこっちまで顔出してくれたの」



怪訝そうな顔をする衣沙に、説明する。

「わたしが一緒に行かない?って誘ったの」と言えば、彼の表情は余計に暗くなった。



流くんこと、風見 流星(かざみ りゅうせい)くん。

彼は衣那くんの親友であり、何を隠そう満月ちゃんのお兄さんだ。だから衣那くんと満月ちゃんは、流くんを通して出会った。



衣那くんとかなり仲良しでずっと一緒だったから、その腐れ縁であるわたしやなるせとも知り合いで。

連絡が来たときは驚いたけど、お仕事でずっと地元を離れているから、ひさしぶりに会えるのは嬉しい。



わたしの待ち合わせの前に用事ができた、というのも、流くんと待ち合わせしていたからだ。

3人でふたりのお祝いを買いに行くの、と話したら、彼もそれに乗ってくれた。



というわけで、当初の予定よりもふたり増えて、4人でお買い物することになった。

……ちょっと、纏まるか不安だけど。