え?と。

顔を上げたなるみの頬に触れたくなって、でもその衝動をこらえて、薄く口角を上げる。笑えている自信はこれっぽっちもなかったけど。



「……俺嘘ついてんだよね」



「嘘?」



「なるみと一緒」



なるみが『もう恋愛感情で好きじゃない』と言ったとき。

本当に理解が追いつかなくて呆然とした。



「満月ちゃんのこと好きだけど。

それは小さい頃から世話になってるのと、兄貴の彼女だからって理由だけだよ」



言ってみれば姉みたいな人だった。

将来的に義理の姉になるんだから何も間違ってないけど、本当に、それ以上の目で見たことなんてない。




「……え」



「なるみが、兄貴のこと好きって言ったじゃん。

……そしたら俺いつか見放されんじゃないかなーと思って、嘘ついて、なるみと一緒にいた」



違うけど。

本当はどこか弱みにつけ込めないかなって、そんな最低なこと思ってたんだけど。



「なら……

満月ちゃんのこと、好きじゃないの?」



「恋愛感情じゃないよ」



「じゃ、じゃあ……

本命って言って、女の子と遊んでるのは?」



……ああ、バレた。

確かにそうだ。俺が満月ちゃんを好きじゃないんだとしたら、わざわざそんな嘘をついてまで女の子たちと遊ぶ必要なんてない。