「え! 名前で呼び合うようになったんですか。てか、カウンターに案内されたって、まじですか」


場所は居酒屋。
前に来た時と同じように私の隣には律ちゃんが、目の前には沖くんが座っている。

注文も前と一緒。沖くんがビールに私達がサワー。
今日の出来事を伝えると、ビールをぐいっと煽ってから、沖くんは驚いた声でそう言った。


「うん。これは沖くんのおかげだよ。本当にありがとう。だから、今日は私の奢り。好きに飲んで食べていいからね」

「うえ、まじっすか。やったあ!」

「本当に今回ばかりは沖に感謝だよね」


律ちゃんも珍しく素直に沖くんを褒めている。こんなこと滅多にない。


「水を差すようですが……俺、別に何もしてないですよ。顔を覚えられていたのは小野寺さんじゃないですか。
前にも言いましたが、百パー脈なしじゃないと思うんです、俺」

「それは私も思った」


律ちゃんと沖くんが頷き合っているが、私は首を捻って「そうかなあ」と漏らす。


「好意とは違うかもしれないんですけど、いい印象持っていたんじゃないですか?」


沖くんがつまみの枝豆を口に頬張りながらそう言った。