翌日の昼休憩。
お弁当の律ちゃんに別れを告げ、会社を出る。その私の隣には沖くん。


「うわ~ここのラーメン屋やっぱ混んでますね」


私がcafeレインに行くことになったきっかけのラーメン屋には、相変わらず長い行列。


「本当に。でも、美味しいからわかるよね」

「俺もここ、気に入ってたんですけどね、混んでからはさっぱりです」


くっと泣き真似をする沖くん。元々混んではいたけれどここまでではない。
五分程待てば入ることは出来た。でも、今は三十分以上待つだろう。


「ここのすぐ近くなんだよね。ほら、あそこ」


そうやって、私は行き慣れたcafeレインの扉を指差す。それに沖くんは目をぱちくりとさせた。


「こんなとこにあったんですか」


思っているよりも近くにあったのだろう。沖くんは小さな声で「気付かなかった」と呟いていた。
それには私も同意見だ。全く気付いていなかったのだから。

大きく看板が出ているわけではないし、こっちにカフェがありますよなんて張り紙もない。
ガラス張りの扉の前に、小さくcafeレインと書いてあるだけ。

そして、扉を開けた時に鳴る小さいカランという鐘の音。


「いっらっしゃいませ」


見慣れた光景。コーヒーの香りのする店内。そして、いつものようにモスグリーンのエプロンを着ているオーナー。
ふわふわの髪の毛は今日も健在。