午後の昼下がり。
少し遅めのランチ。

綺麗な三角形をしたサンドウィッチ。パンに挟まれた新鮮なレタスとトマト。
オニオンコンソメスープと、アメリカンコーヒー。


私、小野寺楓(おのでらかえで)が通っている、この『cafeレイン』での定番メニューだ。
ナポリタンとか、ドリアとかもあるけれど、私はこればかり。
毎日サンドウィッチの具が変わるから、飽きることもない。

一昨日食べたベーコンサンドは美味しかったな。
ベーコンと、オニオンスライス、それにミートソースが塗られたサンドウィッチ。

スープも日替わりだ。ミネストローネだったり、クラムチャウダーだったり。
毎日変わらないのはアメリカンコーヒーぐらい。

……そして、彼の姿。


そっと私はコーヒー片手に盗み見る。
椅子に座って、洗い物を終えた食器を拭いている彼。


私の会社から徒歩二分の場所にこのカフェはある。
個人経営だからか、こじんまりとした店内。
cafeレインの看板が入口にかけられており、その扉を開けるとカランと鐘の音が鳴る。


店内は十人程しか入れない。だけど、一人で経営しているからそれぐらいがきっとちょうどいいだろうな。
挽き立てのコーヒーのいい香りが漂う。
ウッド調の家具で統一され、その一角にはオーナーの趣味なのか様々な小説がずらっと並べてあった。
その下には漫画もちらほら。どうやらそれは常連のお客さんが置いていったものみたいだけど。
こないだいたお客さんがオーナーと話していたから知っているだけ。

私はオーナーとほとんど会話をしたことがない。
ただの常連客ってだけ。
通い始めて一ヶ月。

なるべく休み時間いっぱい使って、私はサンドウィッチを食べた。