少し緊張している朱鳥の手を握る。

今日は定期検診の日。

産婦人科の先生__五十嵐 湊翔(いがらし みなと)とは大学時代の友人だったので、特別にと、俺の昼休みの時に検診をしてもらうことにしていた。

俺が朱鳥の検診に付き合いたいのもあるけど、それよりも朱鳥が不安にならないようにする事が目的だった。

朱鳥は、男の人が苦手だし、最近は少し慣れてきたとはいえ、やっぱりあまり、話さない男の人と2人きりになるのは怖いようで、それで俺は一緒にいる。

俺がいれば、多少は大丈夫なようで、朱鳥も少しだけ緊張しているような感じだけだった。

今はエコーを撮ってもらっていて、お腹の中の子供の様子をみている。

まだ、人の形はしていないものの、今日は心臓の鼓動を確かめることが出来た。

その後、血液検査と軽い診察をしてもらい、今日の検診は終わり。

「清水さん…いや、これだとやっぱ変な感じするから朱鳥ちゃんって呼んでもいいかな?」

そう言われ、朱鳥はコクンと頷く。

「ありがと。じゃあ、朱鳥ちゃん。まずね、お腹の赤ちゃんは元気だよ。それに、赤ちゃんは双子だね。今日、心臓が2つ確認できた。」

そう言って、湊翔は俺と朱鳥にエコーの写真を渡してくる。

それから、心臓の場所などを教えてくれ、朱鳥はとても嬉しそうな表情をしていた

「…でもね」

だが、湊翔がそう言った瞬間朱鳥の顔が少し強ばる

「あ、大丈夫。そこまで、緊張しないで。」

コクン

少し緊張している朱鳥の背中に手を当て、ゆっくりとさする。

「…少しだけ、朱鳥ちゃん側の栄養が足りてないかな……」

そう湊翔が言うと、少しだけ朱鳥がシュンとなったのがわかった。

「さっき、体重計ってもらったでしょ?その時ね、普通なら赤ちゃんのぶん重くなってもいいんだけどね…つわり、酷いみたいだし食べれてないのかな、体重、減ってたんだ。」

悲しそうな顔をしている朱鳥の背中を優しくさする。

「楓摩から、話は聞いてるし、点滴もしてるみたいだけどね……やっぱり、少し心配なんだ。…赤ちゃんが心配、というよりは、朱鳥ちゃんの体の方がね。」

そう言われて、朱鳥は驚いたような顔をする。

「朱鳥ちゃん、元々体弱いみたいだし、栄養がつかないと、いつか倒れちゃうよ。今も、少し貧血が出てるし…一応、薬は出しておくけど次回の検診もこんな感じだったら入院も考えようか」

不安なのか、ショックなのか…朱鳥は少し泣きそうな顔をしている。

そんな朱鳥の頭をポンポンと撫で、声をかける。

「朱鳥、大丈夫だよ。少しずつでいいから食べられるようにしていこ?」

そう言うと、朱鳥は小さくコクンと頷いた。