よくよく考えれば
静棋さんは
赤の他人だし、
いい人なのか悪い人なのか
分からなかったわけだけど、
ついて行った理由は
『補導されるよりはいいだろう?』
という言葉だった。

この時、家に帰りたくなかった。

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家出の理由は僕の性癖にあった。

そう、僕は所謂ゲイ。

あの日、この性癖が両親にバレ
大喧嘩になり、
夜中なのも構わず家を出た。

漫画喫茶にでも行こうかと
駅前を彷徨いていたら
静棋さんに声をかけられた。

因みに、学校には
諸事情により休学でと言っておいた。

静棋さんには家族がいる。

だけど、平日は僕といることが多い。

仕事場が近いという理由で
平日はマンションにいて
土日に家族のいる家へ帰るのが
静棋さんの生活パターンだ。

時折、平日でも
向こうに寄ることもあるけど。

家族がいるとわかっているのに
何時しか、僕は
静棋さんに惹かれていた。

駄目だとわかっていても
僕に優しくしてくれて
衣食住を与えてくれた
彼に惹かれないはずがなかった。

僕がゲイだとカミングアウトしたら
自分はバイだと教えてくれた。

そうして、男のタイプは
僕みたいなのらしい(苦笑)

そうして、一ヶ月前、
僕達は愛し合ってしまった。

静棋さんは上手だった……

僕が痛くないように
念入りに解してくれるし
挿入(い)れる時もゆっくり
丁寧にしてくれる。

愛撫している最中にも
痛くないかとか訊いてくれる。

そんな関係になってから
更に一ヶ月。

季節は初夏になろうとしていた。