【side 梨月】


「ねぇりっくん、この問題も教えてもらっていい?」


「……また?どれ、見せて」


ある日の放課後、ゆずが俺の部屋に来た。


いつもどおり二人で宿題をやって、ゆずの苦手な数学を俺が教える。


「この問4なんだけど」


「ああ、これはな……」


べつにこれは、恋人のフリをしてるからとかじゃなくて、友達として一緒に勉強してるだけ。


元から俺たちは、こんなふうに互いの家を行き来する仲だった。


放課後一緒に帰る流れで、たまに俺の家に寄って二人で宿題をしたり、借りてきたDVDを観たり。


気が付いたらいつの間にかそんな関係ができあがっていた。


ゆずとは気が合うから一緒にいて楽だし、お互いに気を使わないし。


俺が女子でここまで仲良くなれたのは、たぶん彼女が初めてだと思う。


「うわー、すごい!なるほど。りっくんの教え方超わかりやすい!」