「ああもう、私のバカ……」



1度は出たはずの見慣れた校舎内を歩きながら、私はひとり小さくつぶやく。

ほんとにもう、学校を出て1時間以上も経ってから教室にスマホを忘れたことに気づくなんて……トロすぎでしょ、私。


一緒に来てくれようとしてくれた沙頼と佳柄は、申し訳ないからと押しとどめた。今は、さっきまで私もいたドーナツショップで待っていてくれている。

急いで探して、戻らなくちゃ。心の中でそうつぶやき、階段を上がる足を速めた。


放課後の、少し遅い時間だ。やはり日中と比べれば、生徒たちの騒がしい声はあまりない。

けれどもどこからか吹奏楽部の練習する音や運動部の掛け声が聞こえてきたりして、さっき学校を出る前とはまた違った雰囲気が漂っていた。


……金子くんも今ごろ、部活がんばってるのかな。

廊下を歩きながら、無意識にそう考えてしまう。それから少し遅れて、ずきりと胸が痛んだ。

金子くんは、中井さんと付き合い始めた。もう私は、失恋している。

なのに未練たらしく彼のことを考えてしまう自分が、情けなくて、嫌になって。

そして、それと同時に──辻くんのことを、思い出した。